広島のまちを変える、プロの自転車レーサーたち

MACHI LOG編集部


寄稿ライター

「ヴィクトワール広島」の選手たち

「しまなみ海道」などを自転車でめぐる旅が脚光を浴びている、広島県。

そんな広島で、県内初のプロのサイクルロードレースチームを立ち上げた自転車レーサーがいます。

中山卓士さんは、プロの自転車レーサーとして栃木やベルギーで活躍した後、広島へ。日本でロードレースを広めたい、自転車で地域を盛り上げたい、そんな想いで2015年にプロチーム「VICTOIRE広島(ヴィクトワール広島)」を設立しました。

ヴィクトワール広島は、レース参戦だけでなく、様々な形で地域を盛り上げる地域密着型プロチームです。

夜遊びの中学時代、栃木、ベルギー、そして広島へ

「ヴィクトワール広島」代表を務める中山卓士さん

中山さんが自転車競技に出会ったのも、広島へたどり着いたのも、ひょんなきっかけからでした。

東京で育ち、夜な夜な池袋で遊びまわっていた中学3年生の時、高校だけは行けと親に言われた中山さん。高校に受かるために何かしようと、父に勧められて自転車競技を始めました。

高校では、「練習をサボったら坊主」という監督の言葉でがむしゃらに練習に励み、インターハイ、国体に出場しました。

アマチュアから宇都宮でプロに

その後、アマチュアを経て、宇都宮ブリッツェンなどのプロチームでレーサーになりました。

――
宇都宮では、ロードレースが盛んなのですか?
中山
宇都宮では、92年から毎年日本最高峰の自転車レース「ジャパンカップ」が開催されており、2008年に日本初の地域密着型プロチーム「宇都宮ブリッツェン」ができました。
ロードレースで地域全体が盛り上がり、自転車が地域の文化として根付いています。

中山さんはその後、ベルギーのプロチームで3年間活躍し、23歳で競技人生に終止符を打ちます。宇都宮とベルギーでの経験は、中山さんに大きな影響を与えました。

ロードレースが国技のベルギーへ

photo by ken hashikawa ベルギー時代の中山さん

――
ベルギーでは、ロードレースが国技だと聞きました。
中山
はい、ベルギーでは、ロードレースが国技で、日本で言えば野球のような存在です。
競技人口は、日本が5000人なのに対して、北海道くらいの面積しかないベルギーが5万人。どこへ行っても街中でロードレースが開催され、人びとは日常的にレース観戦で盛り上がります。
また、街中に自転車専用レーンがあり、日々の暮らしでも自転車はマストアイテム。レースも自転車も、人びとの生活の一部になっていました。

自転車競技を辞めてベルギーから帰国した中山さんは、知人の縁で広島のお寺で半年間修行をすることになります。

これから何をしようかと考えた時、「ベルギーのように日本でもロードレースをメジャーにしたい、宇都宮のように地域に密着した日本一のチームをつくりたい。」と思い立ちました。

マネジメントや資金集めの経験は一切なかったものの、周りに相談しながら、弱冠25歳で広島にチームを立ち上げたのです。

自転車が人々を魅了し、まちを変える

江田島サイクリングツアー

ヴィクトワール広島には、現在8人のレーサーが所属し、プロツアーレースに参戦しています。

チームの監督である中山さんは、ロードレースを「全ての選手がきちんと生計を立てられるようなプロスポーツにしていきたい。」と考えています。

それと共に地域を盛り上げ、一人ひとりに自転車を身近に感じてもらうため、自治体や住民など地域全体を巻き込もうと、日々奔走しています。

――
広島では、どのような活動をされていますか?
中山
広島の様々な自治体を自ら回って、サイクルイベントの提案をしています。これまで、しまなみ海道や大竹市、江田島などで、サイクリングツアーのような誰もが楽しめるイベントを企画してきました。
自転車愛好家だけでなく、様々な人たちが参加しています。サイクリストの聖地と言われるしまなみ海道は、美しい景色や美味しい食事、観光スポットとサイクリングがうまくマッチして、日本でも有数の観光地になっています。
サイクルイベントと共に、自転車専用レーンやサイクルオアシス(給水、トイレ、空気入れ等が完備)という環境が整っています。他の地域でも、自転車で地域を活性化しようという試みが増えていると思います。廃線になった鉄道線路跡地に、サイクリングロードを作るような事例もありますね。

安全で楽しいサイクリングが、暮らしを変える

ヴィクトワール広島による安全教室

サイクリングが身近になる一方で、街中では危険な運転も目にします。

ヘルメットをせずにすごいスピードで自転車を走らせる小学生、ベルトもせずにママチャリに乗せられている子どもたち、スマホを見ながら自転車をこぐ大人・・・。

ちょっとした接触や転倒で、大けがどころか、命まで失う危険性もあります。

ヴィクトワール広島では、レースの合間を縫って、ほぼ毎月のように学校やイベントなどで自転車安全教室も開催しています。プロレーサーが実技を交えて話をすると、子どもたちもとても真剣な眼差しで聞き入ります。

――
自転車安全教室では、どのようなことを伝えているのですか?
中山
僕たちは、毎月3000キロ、1年で3万6000キロは自転車で走っているので、何が危険で、どうすればいいか、感覚で分かっています。
特に出会いがしらの事故が多いので、みなさんが「3者(自転車・歩行者・車)の目線」を持ち、お互いを意識して譲り合えるようになることを大切にしています。
これからも、特に学校での教室をもっと開催していきたいですね。プロレーサーの責任として、地域の安全な暮らしに貢献したいです。

夢は、広島で国際レース開催!

ヴィクトワール広島が生まれて3年。

地域で応援してくれる人も増え、スポンサー企業も約60社に増えました。また、中山さんが広島に来る前は、実業団に登録しているアマチュアチームが1チームのみだったのが、今では7チームになっています。

地域密着型チームは、少しずつ地域に変化をもたらしています。

――
今目指している夢は、何ですか?
中山
チームとしては日本一を目指し、さらに世界を目指します!
そして、広島で国際レースを開催すること。ロードレースは一度見ると、絶対にその面白さを感じてもらえるスポーツです。
国際レースで、地域に人を呼び込み、競技についても知ってもらいたい。まずは近い将来、日本のプロツアーを広島に招致しようと、今動いているところです。

プロスポーツで地域をおもしろく

日本では今年5月に、「自転車活用推進法」が施行されました。

環境や健康にも良い自転車の利用を、日本全体で進めていこうとしているのです。これから様々な地域で、自転車専用レーンやシェアサイクルなど、自転車を使いやすい環境が整備されていくでしょう。

「地域密着型のプロスポーツチームが、自治体や地域の人々と一体となって、自転車で人を呼び込み、地域をおもしろくする。」

中山さんたちが始めた取り組みは、これから日本で広がるモデルになりそうです。

(ライター:宮原桃子)

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