「ものづくり」は地域を幸福にするか?

燕産業で地場産業の発展をリードする四名の経営者の方々、燕三条金物四銃士より、「燕三条の地場産業の展望」というテーマにお話をうかがいました。そこにはものづくりを通して「人」への愛と誇りに満ちあふれています。

「ものづくり」は地域を幸福にするか?

-「もののづくりの衰退」が叫ばれるなか、ものづくりは地域をHappyにする力が本当にあるのでしょうか。例えば玉川堂さんは顧客も限定されていて、地場への波及というのはあるのだろうか、という疑問が湧いてきます。確かに伝統産業という位置づけという側面もありますが、地場産業と捉えて良いのか微妙な点もありますが、いかがでしょうか。

玉川氏:弊社は江戸時代中期に創業して、その頃は職人が自分で作って自分で商品を売っていました。企画から販売まで一貫したコンセプトに基づいてものづくりを実践してきたのです。それがものづくりの原点です。

明治時代になって博覧会等に出展するようになり、造形的要素が加わり、そして地場の問屋に商品を卸すようになりました。問屋に卸すことは多くの人に商品を届けることができるというメリットではあるのですが、お客様の声が聞こえなくなってしまうという欠点もでてきてしまったのも事実です。

21世紀の「ものづくり」について考えてみよう

これからのものづくりは、地場の構造、つまり、メーカ・問屋・小売店・お客さん、この流通の仕組みを見直す時期に来ているのではないか、と思います。

SnowPeak社は自分達で一貫してされていますが、先代の頃はやはり問屋さんを通していました。現在はショップを持って、自分の力で全て通してお客さまにどれだけ感動を与えられるようなものづくり、販売づくりを実践され続けています。日本経済に必要なことは、お客さまの声をどれだけものづくりに活かし、感じることできるかが、ものづくりの本質です。その本質を知ることが、地場産業活性化のカギだと思います。

山村氏:燕三条の街には理美容鋏材を製作・販売しているところがほとんどありませんでした。

包丁の材料等を取り扱う他の事業は競合が多く、一方で理美容鋏材のほうは他と競合することもありませんでしたので、ターゲットをしぼって取り扱うようになりました。他にも利器を15万丁くらい扱います。

そうすると、その製造する過程でたくさんの人の関わりがうまれるので、そこには雇用が生まれる効果が地場産業にはあるのかな、と思います。

兼古氏:この地域は非常に大きな産業集積をもっています。金属やプラスチック等の素材をつくり、素材問屋もあります。加工はもちろん、全国や世界への販路もあります。また、分業形態をとって大量のものを効率的に生産できるようになっています。
しかし、最近は生産から販売まで一貫して行う会社が増えてきました。燕三条地域は信濃川、中ノ口川、西川が流れ、物を運ぶのに適していました。ここを経由して、昔から全国に製品を流通させることが可能だったのです。ものづくり以前にこの地域は物流力、販売力があったのです。今で言うマーケティング力が強かったのですね。

なので、地域であっても世界中に物流できる力が燕三条地域にはあります。だからいろんな情報も集まり、探究心旺盛な職人さん達が新しいものを生み出したりしてきました。いろんな技術が集まり、それが、また刺激し合って新しいものを生み出す、そんな地域です。だからこそ、その波及効果というのは非常に広い範囲に及んでいると言えるのではないではないでしょうか。

「問屋を省く」のは流通革命なのか?

-燕三条は歴史的に金物商の力が強かったのですね。全国からニーズを拾い、そのニーズをものづくり屋さんに伝え、それにものづくり屋さんは応える、そんなイノベーションを起こしてきたのですね。では、そうした全国からのニーズを拾う役割を担ってきたであろう「問屋さん」を省くことがしばしばあるようですが、それは本当に効率的なのでしょうか。

山後氏:ケース・バイケースだと思います。例えば、私の会社では、業務用の道具類は100%産地問屋さんを使っていますが、同じ工場で作っているキャンプ用品などは産地問屋さんを使いません。

元々金物が作れた、それを商う人がでてきた、そして産地問屋さんがでてきました。物があったから商社がでてきて、商社があったからメーカーが存続できたのです。

しかし、ここにきて商社さんが産地だけでなく、いろんなものを商い、地場産品と競合する中国産の製品なども取り扱うようになりました。

そうなるとメーカーとしては、ではもう問屋さんのことは頼れないんだ、という意識がでてきたわけです。だから自分達で販路を開拓して行こう、という流れになったわけです。ただ、問屋不要論とは一概に言えません。業界毎などで使い分けているのが現状だと思います。

-大量生産製品等は技術が一度出来上がれば、それをどこかに持っていったほうが得ではないか、企画屋・プロデューサー・商社として特化した方がいいのでは、という考え方が生まれてもおかしくない状況であると思われます。それでもこの燕三条でものづくりを続けていくメリットというのはどこまであるのでしょうか。

兼古氏:三条の問屋さんは総合的に商品を取り扱うところ多くて、その範囲も日本全国はもちろん、海外にもつながっているので、この地域は国際競争が厳しいところでもあるのです。だから100円ショップで売られているような製品も作っているし、最高級品も作っています。その二面性がいいのではないのかな、と思うのです。例えば安価なものだけに特化することで、さらに安い産地に取って代わられるよりも、なんでもここに来れば手に入る、という場所というのは魅力的だと思います。

ただ、きちんと住み分けをする必要があります。安価な輸入品が入ってくるのは仕方がない、と手を拱いているのではなくて安いものも作れるような、戦えるべき要素はきちんと戦って、生産競争もすべきだろうし、差別化された高品質なものも、こちらをメインとして作っていき、他品種少量の生産体質をこの地域ではしていくべきではないかと考えます。

-選択と集中という言葉がありますが、ものづくりの観点でいえば生産と技術の裾野が広いほうがいろんな状況に対応できるので、メリットがあるのかな、と思います。

「JAPAN DREAM」を!

-製造業に従事する人がどんどん少なくなるなかで、ものづくりの魅力を後継者に伝える、育成の仕方という問題についてはどう考えられていますか。

山村氏:韓国や台湾の生産地をみてきましたが、日本の技術屋が指導して、日本の規格に合うようなものを作って日本に輸出していました。それは、我々が10年20年かかって培ってきたものへ瞬時に到着するようなものではないかと。そういう状況のなかで、後継者というのは非常に難しい。ただ、我々には「ブランド」があります。中国・韓国・台湾では「ブランド」がまだないです。「ブランド」をいかに浸透させるかが大切なのです。

後継者を育成するのは、実は簡単なんです。月50万もらえればみんな後継者になりたがります。ジャパンドリームが実現できるような、そういう育て方をすればいいんですよ。

-「先ず隗より始めよ」ですね。技術屋の賃金や労働環境というのは残念ながらあまりいいものではないのが実情です。こういうところをもう少し全体的にリスペクトするようになっていけば、少し商品の値段が高くなるかもしれませんが、正当な対価をいただくようになっていけばいくことで、後継者も出てくるのかな、と思います。

山後氏:昔は地元に帰っても仕事があったので、大学などで東京に出ても、みんな帰ってきていました。しかし、今は仕事が無い。長男は後を継がなければならないから戻るけれども、その他は戻らない。そうして人材が流出していくのです。新しい価値を見つけて、仕事を作っていかないと、衰退する一方だと思います。

燕も三条もなぜ地場産業と言えるのか、というのは、作れる人間がたくさんいるからです。人数が多ければみんな競争であり、いろんな考えが生まれ、活力がでてきます。逆に人数が減れば活力がどんどん無くなります。少しでも多くの人が帰ってくるようにしなければなりませんね。

「ブランド」で戦う

-「ブランドで世界と戦う」、というお話がありましたが、「ブランド」とは何だと思われますか?
玉川氏:「非競争の世界を構築すること」、つまり競争をしないことだと思っています。比較されても打撃を受けないことで、競合他社に勝つのではなく、お客様の満足水準に勝つことなのです。ユニクロの柳井社長は「お客様との競争に専念する」と言われ、ディズニーリゾートでは「毎年お客様に新しい驚きを与えるために何をするかに専念する」をテーマとしているそうです。どれだけその会社の世界を構築するかということではないでしょうか。

山後氏:次に商品を買ってくれるために「覚えておいてもらう記号」だと思っています。その記号はお客様との約束。お客様の立場からみれば、この記号がついている商品を買えば、これくらいの満足度を得られるであろう、という一定の約束を果たしてくれるものであり、メーカーの立場からみれば、お客様との約束の範囲を決めているものだと考えています。

山村氏:常にお客様の満足を得るもの・驚きを先に出すことなのではないかと考えています。だからこそ「ブランドを守る」というのはものすごい労力なのです。

兼古氏:私は「差別化のための手段」と認識しています。他社の同様の商品とは違うんですよ、と認識していただくために使うものです。そうなるためには、デザインに品質、耐用性といったものを掛けあわせて差別化する。一度使ったらもう一度使いたくなるようなものを作り、それを重ねていってより良いものを作り続けていけば、ブランドになるのではないでしょうか。地域も同じだと思います。

「ここでしか買えない」をつくること

-これからの地場産業はどういう方向に向かっていくと思いますか?

玉川氏:日本は高付加価値に特化したものづくりが不可欠で、高価格への挑戦だと思います。どれだけ高い価格でどれだけ高い感動を与えるかなんです。そのために、この技術、この製品は世界一だという分野を地場の各企業が保有しなければなりません。そうすれば、世界でその企業しか存在しない製品のため、どんな価格であろうが、その企業から購入することになります。競争する相手がいなくなるわけです。「〇〇ならば△△社だ」という専門家として認められるようなものづくりに経営資源を投入していく、それが地場産業、強いては日本の産業の生き残る道ではないかと思います。

「ものづくり」が教えてくれるもの

「ものづくりには出会いがあります。」
「顧客満足度は従業員の満足度に比例します。」
「ものづくりは縁づくりです。」
「みんなへの感謝の気持ちこそが大切。」
「家族を愛し、仲間を愛し、その土地を大好きになること。愛することが一人一人の利害でなく、まとまりを生みます。」
「仕事への誇り。その誇りが世界中から人が集めます。」
「ものづくり」を通して伝えたいこと、それがこうした四銃士のみなさんの言葉から伝わってきました。それは「ものづくり」と言ってもそれは決して「モノ」に焦点が当たっているわけではないことです。全てはその「ものづくり」を通して「人」に向かっている。どれだけ人を幸せに、楽しませることが「ものづくり」の真髄といえるのではないでしょうか。

パネラー
・株式会社兼古製作所 代表取締役 兼古 耕一 氏
・株式会社山村製作所 代表取締役 山村 登 氏
・新越金網株式会社 代表取締役 山後 春信 氏
・株式会社玉川堂 代表取締役 7代目 玉川 基行 氏

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MACHI LOG編集部

「地域の魅力を伝える」を使命に、PR不足の地域の課題を解決します。 情報発信のみならず、地域の仕事づくりを目的にした講演やワークショップ、地域をもっと良くしたい人達が集まるイベントの開催も定期的に行っております。